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スマートフォンの時代

今日のアンドロイド端末の躍進にともない、ユーザーのスマートフォン移行が本格化すると、あっという間に従来型の携帯電話端末は消えてしまうだろう。その理由はというと携帯電話端末の市場規模が小さくなると、端末メーカーはこれまでのように高機能な新端末を開発したり、販売するということができなくなるからです。
もともと世界で売れる端末とのコスト差はありましたが、さらに販売量が落ちると一台あたりの開発コストが上昇してしまいます。コストを吸収して採算をとるには端末価格を値上げせざるをえないが、このことが市場縮小をさらに加速させて負のスパイラルに陥ります。スマートフォンは高級あるいは高機能の端末として紹介されることが多いようですが、前述したコストという切り口で見ると安いのです。
携帯電話端末の開発では、あらかじめ携帯電話事業者と協議して決めた機能を、ボタンの機能や配置を工夫しながらハードウェアとして組み込んでゆきます。ハードウェアの設計もハードウェアと細かいところまで摺り合わせたソフトウェアの開発も、端末メーカーが製品の魅力を高めるために徹底的につくり込んでいきます。日本人の多くは、そうした携帯電話端末があたり前になっているから、いかに高度な技術力で作られたすばらしい工業製品であるか、に気づいていないようだ。海外の携帯電話ショップに行ってみれば、作りが悪くて機能の低い製品が大量に並んでいるのを見て驚くだろう。日本には高品質で小型の部品を供給するメーカーがたくさんあります。だから連帯してよりよい製品を設計しやすいのです。また技術力のあるメーカーが多く、小型化、軽量化あるいはボタンの押しやすさやイルミネーションや各種センサーの埋め込み方などでも差別化された商品が生み出しやすいのです。
ただその分だけ開発コストはかさみ、製品の生産性は低くなってしまいます。ところがスマートフォンは、その構造からして簡単です。回転トルクが変化する複雑なメカ構造のヒンジなどまったく必要ありません。筐体は一つの固まりでボタンもごくわずかなのです。極端にいえば、タッチパネル付き液晶ディスプレイとメイン基板とバッテリーを、カバーでくるんだでけです。設計する側にとっても、つくる側にとってもシンプルなのです。
これだけ部品と構造が異なれば、そのコストは大きく異なってきます。しかもスマートフォンが売れ始まれば生産性が上がり、そのコスト差は加速速度的に広がってゆくでしょう。一方一機種当たりの生産販売量が減っていく携帯電話端末は、開発費の償却コストの耐え切れないでしょう。
さらに、現在のところ携帯電話事業者が端末メーカーに支払っている共同開発費も将来は同じ水準を維持することが難しくなるでしょう。そうなれば機種数を減らして高機能端末の価格を上げるか、機能を落としたり、モデルチェンジのサイクルを延ばしてコストを抑えていくしかないでしょう。
それとは対照的に、端末開発の軸足はスマートフォンに移り、新モデルの投入が繰り返されるでしょう。アップルのiphoneはフルモデルチェンジを2年に一度、マイナーチェンジを1年に一度のペースで続けていますが、アンドロイド搭載搭載機は参入メーカー数が多いこともあり、ハイエンドモデルをもっと早いペースで投入していくと思われます。携帯事業者にしても、これまで端末販売が生み出していたキャッシュフローを失うわけにいかないからです。ただ、スマートフォンの時代になっても携帯電話事業者が端末販売で稼ぐという商売を続けられるか疑問です。どの携帯電話事業者も、おそらくすでに端末の長寿命化に備えた戦略を準備しはじまているはずです。そうでなければ生き残れないのです。

中央処理/端末処理という区別

ここまで見てきたように、クラウド側での計算・検索・統合処理の発展に伴って、デバイス側の入力・出力・操作処理も急速に改善されていくことが予想されます。すると将来的には、クラウドのあり方そのものも変わっていくでしょう。クラウド側の処理とデバイス側の処理を強調させるコンピューティング環境が必要になるからです。
現時点では、「クラウド側とデバイス側では十分な連帯がとられておらず使い勝手もいまひとつ」という見方もあります。しかし、双方が今後さらに発展するとなると、もはたどちら側で情報が処理されているのかを、ユーザーはそもそも意識しなくてよくなります。さらに、「いまクラウドにアクセスしているデバイスが、自分のものか、他人のものなのか」、また、「いま参照しているのが手元のデバイス内にあるファイルなのか、カバンの中にあるデバイス内のファイルなのか」などを意識する必要もなくなるでしょう。
現在は、高度な情報処理をしてくれる箱としての「コンピューター」が、あなたの目の前に存在しているため、このような状態を想像するのは難しいかもしれません。しかし、いつの日かそれほど遠くない未来に、この堅苦しい箱が、手軽なクラウドデバイスに取って代わられる時代がやってくるでしょう。もはやその時には、高度な処理がネットワークの向こう側(クラウド)で行われているのか、それとも手元のデバイスを含んだどこかで行われているのかは、ユーザーにとってどうでもいいことになるのです。そういう意味では、クラウドコンピューティングそのものが、「中央の処理/デバイスでの処理」という二者択一を打ち消し、デバイスをも巻きこんだトータルな情報処理の環境を形成していく可能性をはらんでいると言えるでしょう。

オフィスの壁がモニターに!

クラウド側でデータの管理や処理を行えるようになり、それに伴って各デバイスの使い勝手が向上していくと、これまでネットワークや情報処理機能と縁がなかった機器や設備も、クラウドと連帯するようになっていくかもしれません。窓ガラス、壁、机、ドアのように、これまで画面も処理機能もなく、電源すら通っていなかった設備そのものが、ネットワークに繋がり、表示画面になったと想像してみてください。画面サイズの制約が取り払われ、非常に便利になります。オフィスの壁に投影機能や周囲の設備・機能とのワイヤレスでのデータ連帯機能を持たせておけば、残りの実質的な処理はすべてクラウド上ど行うことになります。
このように高度なユーザーインターフェイスを持つ設備型デバイスの数が多くなれば、ここからもう一つのクラウドが生まれてくる可能性があります。これらのデバイスはつねに使用されているとは限らないため、デバイスのアイドリング時に、それぞれから情報処理能力が集まれば「クラウド」をつくることができます。手が空いている機器の処理能力をかき集めて、別の処理に充てるということです。ここまでくると、本当の意味でのM2M(マシントゥマシン)、つまり機器間通信が必要になります。たとえば、個々のデバイスに個別のIPアドレス(ネットワーク上の「住所」にあたる識別番号)を持たせ、サーバー上から配信されるメッセージでそれぞれが協調動作するように環境を整える必要があります。そうすれば、それぞれのデバイスが持つリソースを最大限に有効活用することができるようになります。

高機能デバイスの時代が再びやってくる

パソコン、ITビジネス、企業経営、働き方など、クラウドはさまざまなところに変化を及ぼすと述べてきました。
しかし、実のところ、クラウドコンピューティング自体もかたちを変えていくかもしれません。最後に未来像について少しだけ考えてみましょう。すでに見てきたとおり、クラウドはデバイス側で情報処理量を極力減らし、データセンターに処理を任せる技術です。しかし、歴史は繰り返すものです。センター処理を特徴とする現在のクラウドは残りつつも、デバイス側でのローカル処理も部分的に重視される時代に、再び戻る可能性があります。
こうした予測は、現在のパソコンや携帯電話、スマートフォンといったデバイスが私たちが本来持っている直感的な操作感覚からすると、非常に不自由なものだという考え方に基づいています。たとえば、複雑な配列キーボード、狭い画面、押しづらいボタン、画面操作が平面的にしかできないことなど、あげはじめるときりがありません。クラウド側での処理が高速化して便利になればなるほど、デバイス側のユーザーインターフェイスを強化し、トータルな使い勝手を向上させることが求められるようになってくるのです。
よって、クラウドが一般化した時代には、現状とは比べものにはならないほど高度なユーザーインターフェイスを搭載したクラウドデバイスが登場しているはずです。デバイス側の処理能力のほとんどは、そのような高度なユーザーインターフェイス処理の実現のために使用されるようになるはずです。さらにその場合、画面のサイズは、ケータイとパソコンの中間程度のモバイル機器が数多く登場すると考えられます。また、デスクトップ機器でも、音声入力や画面タッチはもちろんのこと、3D技術によって、多層的に重ねられた3次画面や、ホログラフィックのような空間投影と空間への3次元入力を可能とするグーグルやゲームコンソールに似た操作デバイスが登場するでしょう。

クラウドはエコ時代の象徴!

クラウドにとって、データセンターで電力確保が大きな成功要因を握っていることはすでに述べましたが、データセンターの電力消費は、グリーンITの観点から見直されつつあります。たとえば、企業が独自で保有するIT資産。パソコンやサーバー、ネットワーク機器の発する熱量は非常に大きく、その冷却のためだけに、フロア全体を常時低温に保つなどの工夫をしている企業もあります。これらをクラウド化し、高効率な電力・空調利用環境が用意されているデータセンターに集約してしまえば、各社の空調・電力効率は大幅に改善されるはずです。
そうした意味で、無駄な電力消費を抑えられるクラウドの技術は、グリーンITの考え方を後押しするものです。
また究極的には地球温暖化ガスの排出抑制にも貢献する技術でもある以上、クラウドを環境配慮と結びつけて考えるような動きも、ますます加速するでしょう。
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